量子力学でのエルミート演算子について
共役演算子
(ϕ,Xψ)=(Yϕ,ψ)
を満たす演算子 Y のことを,演算子 X の共役演算子という.このとき,
Y=X†
と書く.
エルミート演算子
X†=X
つまり,
(ϕ,Xψ)=(Xϕ,ψ)
を満たす演算子 X のことを,エルミート演算子という.
エルミート演算子の固有値は実数であることの証明
あるエルミート演算子 A^ に対して,その固有状態を ∣ai⟩ 、固有値を複素数 ai とする(添え字 i は0を含む自然数).すなわち i 番目の固有値方程式は
A^∣ai⟩=ai∣ai⟩(1)
と表される.エルミート性より A^†=A^ なので,j 番目の固有値方程式の両辺のエルミート共役をとると,
⟨aj∣A^=aj∗⟨aj∣(2)
となる.式(1)の両辺に左から ⟨aj∣ をかけ,式(2)の両辺に右から ∣ai⟩ をかける.
⟨aj∣A^∣ai⟩=ai⟨aj∣ai⟩(3)
⟨aj∣A^∣ai⟩=aj∗⟨aj∣ai⟩(4)
ゆえに
(ai−aj∗)⟨aj∣ai⟩=0(5)
となるから,
i=j のとき,⟨ai∣ai⟩=0 なので ai=ai∗ である.複素共役が不変なので ai は実数である.つまり,エルミート演算子の固有値は実数であることが示される.
エルミート演算子の固有値と直交性
エルミート演算子の固有値が実数であるから, aj∗=aj .よって i=j のとき,ai−aj∗=ai−aj=0 なので,式(5)より
⟨aj∣ai⟩=0
つまり,異なる固有値に対応する固有状態は直交する